IT翻訳者の疑問

この業界に入って約20年。私の疑問は相変わらず解決しません。

訳しにくい言葉:browse

画面用語としてのBrowseは、「参照」と訳されていることが多いのですが、いつでも「参照」という訳でよいのでしょうか?
Trados Workbenchを5.5からアップグレードしたとき、あれ? と思ったのは、「ファイルから訳文を生成」ダイアログボックスの「ログ ファイル」というボタンをクリックすると表示されるドロップダウンに、「参照」、「表示」、「削除」の3つのオプションがあることでした。「参照」と「表示」はどう違うんでしょう? 英語版インターフェースでは、ドロップダウンに表示されるのは「Browse」と「View」と「Delete」ですが、「Browse」(参照)を選択するとWindows共通のファイル作成画面が表示され、ログファイルを新規作成したり、既存のログファイルを選択したりすることができます。こんないろいろなことをBrowseの一言で済ませられるのはあんまりです。といっても今更どうしようもないのですが。
画面用語の場合は横幅の制約もあることから、無難に「参照」と訳しているのだと思いますが、文章の中でも「参照」で押し通している人も結構いるようです。
またマイクロソフトMSDNライブラリで見つけた例なのですが、
http://msdn2.microsoft.com/ja-jp/library/z613zk0e.aspx

パスまたはファイル名を入力するのではなく、[Custom Directory Set] ダイアログ ボックスを使用して、ディレクトリまたはファイル名を参照します。

という文章を読んだとき、「参照してどうするのよ?」と思いました。
英語版のページhttp://msdn2.microsoft.com/en-us/library/z613zk0e.aspxでは、

Use the Custom Directory Set dialog box to browse to the directory or file name to search rather than typing in the path or file name.

となっています。このbrowse toは、「参照しておしまい」ではなくて、「(GUIを使って)一覧からthe directory or file nameを選択する」ということではないでしょうか? この場合のtypingは、ただ「入力する」と訳すのではなく、「キーボードから入力する」と訳した方が対比がはっきりすると思います。