以前参加したあるプロジェクトでは、ソフトウェアのオンラインマニュアルを翻訳しましたが、原文はXMLで書かれていました。PM(Project Manager)から、「ソースファイルはダブルクリックしても開かないので、テキストエディタで開いてください」という指示があり、おもしろいことを言うものだなあと思いました。マニュアルの読者はXMLファイルをエディタの画面で眺めるとでも言うのでしょうか。読者が見るのと同じ形式の原典を参照できなければ、まともに翻訳できないのですが。
最近引き受けた別のレビューの仕事でも、ソースファイルがXMLでした。これもオンラインヘルプなのですが、「英語版の読者が見るのと同じ形式の原典」がクライアントから支給されていないとのことです。翻訳済みのrtfファイルを開いてみたのですが、なんか内容が変です。先頭から読んでいっても話の内容がさっぱりつかめません。ファイルの真ん中あたりに「Introduction」があるし。ネット上でちょっと検索してみたら、原典をオンラインで表示できるのがわかったので、それを見てみたら、冒頭に「Introduction」があります。どうも、項見出しや段落のタグにIDがあって、XMLファイルの中ではそのIDでソートされてしまっているようなのです。たとえてみれば、紙芝居をシャッフルして
- おじいさんは山に柴刈りに、
- 大きなモモが流れてきました。
- おばあさんが川で洗濯をしていると、
- 昔、あるところにおじいさんとおばあさんがいました。
- おばあさんは川に洗濯に行きました。
となっている状態で翻訳しろというのだから、無茶な話です。翻訳した人はおかしいと思わなかったのでしょうか。早めにPMに報告していれば、「英語版の読者が見るのと同じ形式の原典」をすぐに用意できなかったとしても、私がレビューするときには間に合ったかもしれないのに。あって当たり前のものがない状態では翻訳できないと、翻訳者もはっきり言った方がよいと思います。