「制限された特権で実行されているソフトウェアをコードを用いて悪用しようとした場合」

11月30日の日記で取り上げた「Windows Vista に「最小特権の原則」を適用する」(英語版:「Applying the Principle of Least Privilege to Windows Vista」)というページの2番目の段落の一部です。

しかし、制限された特権で実行されているソフトウェアをコードを用いて悪用しようとした場合、マルウェアはコンピュータの奥深くに仕掛けを作成できないために、計画した攻撃が実行不可能で、容易に削除される可能性があると判断します。
However, if the code is trying to exploit software running with limited privileges, the malware may find itself unable to execute its planned attack and can be easily removed because it wasn’t able to create deep hooks into the system.

こうやって文章単独で英日比較してみると、そう問題があるようには思えないですね。
「場合」は、特定の状況を取り上げてその状況になったときどうなるか、を述べるときに使います。この日本語訳を読むと、「コードを用いて悪用しようとした場合」という状況について述べていることになりますが、そうでしょうか? Howeverの前の文章は、

If you are running your PC with a full administrator account, any program you run and any malware that is able to exploit that program are also running with full administrator privileges. Those privileges are sufficient to open firewall ports, create additional administrator accounts, and even install a rootkit to hide the malware’s presence.
みなさんがコンピュータを完全な管理者アカウントで実行している場合、実行しているすべてのプログラムおよびプログラムを悪用可能なマルウェアもまた、完全な管理者の特権で実行されています。これらの特権で、ファイアウォールのポートを開き、追加の管理者アカウントを作成し、マルウェアの存在を隠すためにルートキットをインストールすることさえできます。

と書かれています。Howeverの前では全権限を持つ管理者アカウントをユーザーが使用している場合のことを述べているので、However以降ではその逆、つまり限定的な特権しか与えられなかったらどうなるか? を強調したいのではないでしょうか。したがって、私ならば

しかし、マルウェアが悪用しようとしたソフトウェアが、限定的な特権で実行されているものである場合は、マルウェアが計画した攻撃を行うことはおそらく不可能で、コンピュータの奥深くに仕掛けを作成できないために容易に削除されるでしょう。

などと変更します(「〜特権で実行される」という表現の可否については保留)。the codeはmalwareのことなので、「コードを用いて」は変ですね。ソフトウェアの一種であるマルウェアがコードを使わなければ何を使うのでしょうか。また、the malware may find itself以下の構造は

the malware
may find itself unable to execute its planned attack
and
can be easily removed because it wasn’t able to create deep hooks into the system.

であると私は考えます。計画した攻撃ができなくなるのは、「コンピュータの奥深くに仕掛けを作成できない」からではなく、「管理者権限がない」からではないでしょうか。
ふだんのレビューの仕事でも、このような、「間違っているとは言い切れないけれど原文の意図が伝わりにくい」訳文をたびたび目にします。修正するのはよいとして、翻訳会社から評価を求められたときは何と説明すればいいか悩みます。