IT翻訳では訳語をクライアントがきっちり指定している

理論的にはそうなんですが、クライアントから支給された用語集に従ってさえいればOKでしょうか? たとえばprivate keyの訳として「秘密鍵」が指定されていたら「プライベートキー」と訳してはならない、というのは当然ですが、私の経験では、肝心な用語ほど載っていないのが「用語集」です。
たとえば、マニュアルのバージョンアップの仕事を受注したとします。実際に翻訳するのは、新しいバージョンで追加された機能に関する部分ですが、その機能の呼び名が用語集を見ても書かれていなかったりします。
あるいは、queryという言葉。用語集で「クエリー」という訳が指定されていることがあります。英日の対訳だけでコメントも品詞の区別もありませんが、「From this screen, you can submit a query to the server.」といった文脈で可算名詞として使われているときの訳だと解釈できます。では、「From this screen, you can query the status of a job.」のように動詞として使われているときはどうするか。「クエリーする」などという日本語はないので、「ステータスを問い合わせる」とか「ステータスを照会する」などと訳すことになります。よく、翻訳チェッカーの仕事の内容として「訳語が指定どおりであるかどうかをチェックする」と書かれていますが、チェッカーはこういうときどう判断するのでしょうか。用語集を品質管理の基準として使いたいのであれば、このような個人の判断が介入する余地がないように作っていただきたいものです。私がふだんの仕事で受け取る「用語集」のほとんどは、英日の対訳だけでコメントはあまり書かれておらず、コメント欄そのものがないものもあります。用語集を作った人がどういう思いでその用語を載せたのか、その「思い」が伝わってこなければ、訳語の統一など無理だと思います。

これと同じようなことを、前にも書いていました。