IT翻訳に英和辞典はいらない?

引き続き「メタデータ表示の構成」というページで気になったところを書き出してみます。

メタデータ表示の構成は、セキュリティ計画全体にとって重要な役割を果たします。ただし、上級ユーザーや事前に指定されたユーザーが一部のメタデータを強制的に公開できる場合もあります。メタデータの権限の配置は、数ある堅牢な防御策の 1 つとして行うことをお勧めします。

日本語訳はどうもすっきりしません。原文では、

Metadata visibility configuration can play an important role in your overall security plan. However, there are cases in which a skilled and determined user can force the disclosure of some metadata. We recommend that you deploy metadata permissions as one of many defenses-in-depth.

と書かれています。最初の文章はよいとして、2番目の「上級ユーザーや事前に指定されたユーザー」は「a skilled and determined user」のことだったんですね。determined userが「事前に指定されたユーザー」…。英和辞典を引けば、determinedという形容詞の語義として

1 固く決心して; 決然[断固]とした, きっぱりとした (resolute).
・in a determined manner 決然として.
・be determined to do やる決心である.
リーダーズ英和辞典)

と書かれています。技術を持ったユーザーがその気になれば、といった意味でしょうか。
この文章ではもう一つ、「強制的に公開できる」も変です。「公開する」という言葉は、自分が持っているものを人に見せてあげることを指しますが、a skilled and determined userは、本来ならば見ることのできない情報をむりやり見ることができるんですよね。日本語訳だけ読むと、「強制的に公開できる」というのは良いことのように解釈できますが、そうではないと思います。話の流れを理解していれば、日本語訳が変だと気付きそうなものです。
その次の文章の「数ある堅牢な防御策の 1 つとして行う」という表現も、意味がよくわかりません。defenseとin depthの訳をくっつけて「堅牢な防御策」と訳したようですが、英和辞典でdefense in depthを調べると

【軍】 《防衛線を重層的に重ねた》縦深防御.
リーダーズ英和辞典)

と書かれています。「多重の防護策の一つとして、メタデータへのアクセスを制限することをお勧めします」と言いたかったのですね。deployを「配置」と訳すとまたわけがわからなくなってしまうので、「用語集」にどう定義されているかは知りませんが、臨機応変に訳してよいと思います。
ITの英語は平易だから英和辞典などなくてもできると言われるかもしれませんが、一見簡単な単語だからといって思いこみで訳すと、訳文があらぬ方向に行ってしまいます。そういうのを修正するためにレビュアーがいるんですけどね。