IT翻訳者の疑問

この業界に入って約20年。私の疑問は相変わらず解決しません。

マイクロソフト セキュリティ管理コラム(2007年6月)

毎月いろんな意味で楽しみにしているコラムの、6月分が公開されています。
日本語版:http://www.microsoft.com/japan/technet/community/columns/secmgmt/sm0607.mspx
英語版:http://www.microsoft.com/technet/community/columns/secmgmt/sm0607.mspx
訳そのものについても突っ込みどころは多数ありますが、日本語訳の表記スタイルについても気になる点がいくつかあります。

データを保護する – そのほかすべてのものは単に配管工事
Protect Your Data―Everything Else Is Just Plumbing

タイトルの「-」に見える部分は実はenダッシュです。普通の方法でキーボードから入力できない文字は使うべきではないと思うのですが、原文で使われていたのをそのまま使ったんでしょうね(英語版ではemダッシュですが…)。

(私は意図的に物理層を三角形の外に記しましたが、これは半分は冗談ですが、半分は本当です。- 私がデータ センターを訪れると、いつも決まって物理的なセキュリティ問題が見つかります。)
(I’ve purposefully placed the physical layer outside the triangle, partly as a joke and partly for real―when I visit data centers I routinely discover physical security problems!)

「半分は本当です。」の後に何かゴミが残ってますが、原文のダッシュを生かしたのでしょうか。

データを保護することは今や最重要事項であるため、データ保護は皆さんの注意の大半を受けるに値します。アプリケーションのセキュリティ - セキュリティおよび攻撃者により意図的に悪用される可能性のある方法を考えながらアプリケーションを開発する – は同様に重要です。
Because protecting your data is now paramount, data protection deserves the bulk of your attention. Application security―developing applications with a mind toward security and how they might be purposefully abused by an attacker―is similarly critical.

タイトルはともかく、日本語の文中で「 - 」を使うのはいかがなものでしょうか。こういうときは「――」を使うのではありませんか?

ここしばらくの間、私はホスト ベースのファイアウォールを使用することはオプションではないと主張してきました。これは必要とされているのです。
For some time, I’ve been advocating that using host-based firewalls isn’t an option: it’s required.

日本語の斜体って、読みにくいですよね。

まず、極秘事項の分類を考えてください。これはセキュリティが侵害された場合に、みなさんの責任の遂行に役立つので重要です。次の 4 種類が十分であるべきです: 一般向け、社内、極秘、プライベート
First, think about confidentiality classifications. These are important because they help guide your response in case of a breach. Four classifications should be sufficient: public, internal, confidential, and private.

今時shouldを「〜べき」と訳すのは中学生か機械翻訳ぐらいなものだと思いますが、それはさておき、こういうコロンの使い方はどうなんでしょう。Tradosのデフォルトの分節規則に従うとコロンのところで分節が切れますが、なんで翻訳支援ツールを使ったからといって不自然なスタイルを日本語訳に持ち込まなくてはならないのかということは以前にも書きました。Tradosを使っているかどうかにかかわらず、文章中でコロンの後に語句を列記するスタイルは避けた方がよいと思います。
ローカライズの仕事ではたいていソースクライアントが作成したスタイルガイドが支給されますが、ほとんどは操作マニュアル用のみで、こういうエッセイ風の文章特有の表記(「――」とか)のことは書かれていないんですよね。約物の使い方について書かれた資料は多数あるので、そういうのを参考にすればよいのではないでしょうか。