IT翻訳者の疑問

この業界に入って約20年。私の疑問は相変わらず解決しません。

includingの訳し方

最近、レビューの仕事で「このファイルはxxxxフォルダに含まれています」などという訳をしょっちゅう目にしていて、そのつど「このファイルはxxxxフォルダにあります」などと直しているので、「含む」という表現を見ると「またか」と身構えてしまいます。たとえば、「C++Javaを含むどの言語でも使用できます」といった文章です。原文には「you can use any language, including C++ and Java」と書かれているのですが、includeだからといって反射的に「含む」と訳すと誤解を招くこともあると思います。
たとえば、「昼食会場にはアルコールを含む各種飲み物が用意されていた」という文章の「各種飲み物」はどう解釈すればよいでしょうか。全部の飲み物にアルコールが入っているのか、それともビールやワインやウーロン茶やオレンジジュースが用意されていたのか。
次の文章はhttp://www.microsoft.com/downloads/details.aspx?familyid=689832DB-297B-489F-9E87-8FD78AEEE64F&displaylang=jaからの引用です。

MSDE 2000 は Office XP を含む複数の Microsoft 製品に同梱されています。MSDE 2000 が同梱されている製品の一覧については MSDE 2000 を含む Microsoft 製品 を参照してください。

英語では

MSDE 2000 ships with several Microsoft products, including Office XP. For a complete list of products that ship MSDE 2000, visit the Microsoft Products that include MSDE 2000 Web page.

となっています(青字の部分はハイパーリンクですが、リンク先のページが現在は存在しないようです)。2つの「含む」は意味が違っているのですが、この日本語訳では区別できません。MSDE 2000はいろいろなMicrosoft製品の一部となっているようですが、Office XPは「複数のMicrosoft製品の一部となっている」のではなく「複数のMicrosoft製品の代表」なんですね。*1
ということで、「including Office XP」は「Office XPなどの」、「Office XPをはじめとする」などと訳せばよいと思います。これは別に私が発見したことではなくて、もう何年も前に書籍か何かで読んで学んだことなのですが、「includeは『含む』に決まっている」と主張する人が今でも結構いるのが意外です。

*1:severalの訳が「複数」というのもかなり気になりますが。