『’05-’06年版 朝日新聞の用語の手引』では、
略語の表記は日本高等学校野球連盟(高野連)、国際児童基金(UNICEF)のように、正式名のあとにカッコして入れるのを原則とする。同じ記事で2度目以降は略語だけでよい。また談話の中などでは略語と正式名の前後を逆にしてもよい。原発、農水省のように一般に熟したものは、略語だけでよい。
となっています。ローカライズの仕事で支給されるスタイルガイドでは、略語の表記方法についてはっきり書かれていないことがあります。特に指示がないときは、原文での表記に合わせるというのが一般的のようです。たとえば「European Union (EU)」なら「欧州連合(EU)」といった具合です。
しかし、IT用語の場合もこれでよいかというとちょっと疑問です。原文で「Hypertext Markup Language (HTML)」と書かれているのを律儀に「ハイパーテキストマークアップ言語(HTML)」と訳す必要があるかどうか。略語が定着している場合は、略語を前に出して、必要であればフルスペルまたはその訳をかっこ書きで添えればよいと思います。なぜなら、かっこ書きの部分はあくまでも補足なので、かっこ書きを省いても日本語の文章として成り立つようにする必要があるからです。
かっこ書きを省いた場合に、「インターネット・プロトコル」はなんとなく「IP」のことだとわかりますが、「伝送制御プロトコル」から「TCP」を思い出すのには少し時間がかかるかもしれません。「統一資源位置子」はURLの日本語訳らしいですが、さすがにこの訳が使われているのはあまり見たことがありません。しかし、原文に合わせなければということで「アクセスしたいサイトのUniform Resource Locator(URL)を指定します」と表記するのもいかがなものかと思います。かっこ書きを省くと「アクセスしたいサイトのUniform Resource Locatorを指定します」ですが、日本語として受け入れられますか?