IT翻訳者の疑問

この業界に入って約20年。私の疑問は相変わらず解決しません。

分担訳のメリット

たとえば、全部で5万ワードぐらいある文書を1人で翻訳したら週1万ワードとして5週間かかるので、そこまで待てない案件の場合は5人で1万ワードずつ訳すというやり方を取ったりします。翻訳の時間は4週間短縮できますが、その後の編集に10日ぐらいかかるので、全体では2週間短縮ですね。
ただ、全体を1人で訳した場合は数字に表れないメリットがあります。翻訳の段階で訳語や表現が統一されているので、後の編集が楽になり、翻訳者が信用できる人ならば原文との突き合わせチェックを省いて日本語訳の素読みだけで済むかもしれません。翻訳者が文書の内容を十分理解できるという点も見逃せません。文書全体の1/5だけを割り振られても、前後を読まないと分からないことがたくさん出てくるんですよね。割り振られた分量が少なければ少ないほど、調べ物に割ける時間が少なくなるというか、調べ物をしていると割に合わなくなります。その点、文書全体を1人で訳していれば、読者と同じように概要から順に読むことになるので、すんなり原文を理解できるはずです。
そうは言っても、現実には、2万ワードを4,000ワードずつ5人に割り振るなんていうのは珍しくもありません。どうかすると、全体で5万ワード程度なのに2つの2次ベンダーに25,000ワードずつ割り振るという理解しがたい1次ベンダーもいます。どう見ても、そんなに急ぐ必要のある案件には思えないのに。2次ベンダーはそれぞれ、自社担当分の中で訳語や表現の統一を図るわけですが、全体の半分だけで統一されていたって意味ないですよね。1次ベンダーはもう一度5万ワードをチェックするんでしょうか。最初から1社に丸投げしたほうがお互いやりやすいと思うのですが、目先のことしか考えていないPMがいるのは残念なことです。