文脈情報のない用語集

TradosのMultiTermのように、完成した「用語集」の訳を訳文に取り込むためのしくみはいくつもありますが、まともな「用語集」の作り方は意外とどこにも書かれていないように思います。単に英語の語句とその訳を並べただけの「用語集」も多いですね。「言葉の訳は文脈によって決まる」という当たり前のことが、なぜか忘れられています。
知人から聞いた話ですが、ある会計ソフトウェアのローカライズプロジェクトで「statement」という単語の訳が用語集で「明細書」と定義されていたものだから、翻訳者の一人が「SQL statement」を「SQL明細書」と訳したそうです。SQL statementとincome statementとでstatementを訳し分けることぐらい常識ですが、「用語集に従っていること」がQA(quality assurance)の基準となっている以上は、用語集に無条件に従うという翻訳者の姿勢も間違っているとは言えません。用語集を作る側は「明細書」という訳がどういう文脈で使われるかが当然わかっているのですが、他人も同じようにわかってくれるとは限らないので、面倒でも一つ一つの言葉の定義を明確にしたうえで訳語を指定していただきたいものです。