foolproofではない翻訳支援ツール

Tradosという翻訳支援ツールの翻訳作業用のユーザーインターフェースとしてMS Wordが使われていることについて、最初はすごいアイディアだと思いましたが最近はそうでもなくなりました。ソフトウェアなんてのは人間の仕事を楽にするためにあるのに、Tradosはそうでもないからです。Transitでは訳文のエリアに訳を入力していけばよいのですが、Tradosの場合はいちいちセグメントを開いてやらなければなりません。翻訳者の中にはセグメントを開き忘れる人もいます。100%マッチが大多数でところどころにファジーマッチや新規の箇所があるときに開き忘れが多いのですが、翻訳が必要な箇所を目視で探しているからだと思います。訳してない(セグメントを開いてない)箇所があってもソフトウェアは何も注意してくれません。
セグメントを開いたら、原文を見ながら訳文を入力するのですが、原文がプロテクトされていないのでいとも簡単に変更できてしまいます。わざわざ変える人はあまりいませんが、うっかりやってしまう人は結構いるのではないかと思います。自分でもたまに原文からコピー&ペーストしようとして原文の一部をカットしてしまいます。すぐに気付けば元に戻せますが。レビューの仕事のときに、隠し文字になっている原文(英語)の中に全角文字を発見したこともあります。きっと一括置換か何かの影響でしょう。
専用のインターフェースではなくWordを使うことで、Wordの.docファイルは特に前処理をしなくても翻訳作業ができるというメリットはありますが、だいたいいつもフィールドコードやらブックマークやらでトラブるので、こちらはありがたくもなんともありません。バイリンガルファイルになるとレイアウトもくずれるし。MS明朝とMS UI Gothicが混在しているのは我慢ならないし。翻訳対象箇所だけフィルターで抜き出してもらったほうがよほど楽です。
翻訳の仕事で普通に使う分には、よほど変なファイル形式でない限り大きなトラブルに遭うこともなく済んでいますが、問題はレビューの仕事のときです。セグメントの開き忘れなんてあるはずがないと思い込んでいる人に限って、ろくに見直しもしないで納品してくるんですよね。原文を変更しちゃってる人も同じです。PCの扱いに慣れていて、チェック用のマクロを自分で組めるような人ならともかく、「Tradosのライセンスを持っていれば仕事があるらしい」という理由でTradosを使うようになった人たちは何をするかわかりません。極端な話、原文の一部が削除されているかもしれないし。こちらとしては、想定できるエラーを機械的に見つけてつぶすしか今のところ手立てはありません…翻訳支援ツールを使っているのに仕事が増えてますね。