IT翻訳はこの10年で変わったか?

山岡洋一氏が発行されている『翻訳通信』第78号の案内メールに、次のような文章がありました。

●『翻訳通信』第78号(2008年11月号)の内容

この20年ほどで、翻訳に求められるものは大きく変わった。決められた訳語を使い、決められた語順で訳していくよう求められた時代は終わり、いまでは原文の意味をしっかりした日本語で伝えるよう求められている。翻訳が「語学」の仕事だった時代は終わり、いまでは原文を読み、理解し、適切な日本語を書く能力、つまり総合力で勝負する時代になっている。

私自身はこの仕事を始めてもうすぐ10年という程度のキャリアしかないので、その前の翻訳業界のことは知りませんが、自分の周りを見る限りでは、今は総合力どころか、何だかよくわからない別の力での勝負になってしまっているような気がします。山岡氏が手がける翻訳とローカライズは違うと言ってしまえばそれまでですが、原文を理解していない不適切な日本語でもOKという風潮が、前よりも強くなっているのは気のせいでしょうか。

You transfer a file between a Windows Vista-based client computer and a file server that is running a previous Windows operating system. Then, the Windows Vista-based client stops responding. This problem occurs if the following conditions are true:

  • Windows Vista and the file server use the Server Message Block (SMB) 1.0 protocol to transfer the file.
  • The network connection between the Windows Vista-based client computer and the file server is lost when you transfer the file. For example, the network cable is unplugged when you transfer the file.

出典:http://support.microsoft.com/kb/935427/en

これは、「When you transfer a file between a Windows Vista-based client computer and a file server, Windows Vista stops responding」というタイトルのマイクロソフトサポート技術情報の一部ですが、どうってことのない簡単な文章なのに、日本語に訳すと

Windows Vista ベースのクライアント コンピュータと、以前の Windows オペレーティング システムで実行しているファイルサーバーの間でファイルを転送します。そうすると、Windows Vista ベースのクライアントが応答しなくなります。この問題は、次の条件に該当する場合に発生します。

  • Windows Vista とファイル サーバーの間でファイルの転送にサーバー メッセージ ブロック (SMB) 1.0 プロトコルが使用されます。
  • ファイルを転送すると、Windows Vista ベースのクライアント コンピュータとファイル サーバーの間のネットワーク接続が切断されます。たとえば、ファイルの転送時に、ネットワーク ケーブルが接続されていません。

出典:http://support.microsoft.com/kb/935427/ja

こんなに意味不明になってしまっています。「条件」なんだから条件らしく訳してほしいものです。要はSMB 1.0というプロトコルを使ってファイル転送をしているときにファイルサーバーとの接続が切断されると、クライアント側のVistaが応答しなくなるということですよね。ちなみに、日本語版の最終更新日は2008年9月18日となっています。
「whenは『〜すると』と訳せ」という指示でもあったのでしょうか。経験の浅い翻訳者が何も考えずにそう訳したとしても、こうやって世の中に出る前に誰も気付かないというのが不思議です。
cable is unpluggedも、「ケーブルが外れている」ではなく「ケーブルが外された」でしょう。簡単な英文でもこの有様だから、もっとややこしい技術説明だとどうなることやら。