IT翻訳者の疑問

この業界に入って約20年。私の疑問は相変わらず解決しません。

a copy of the software=「そのソフトウェアのコピー」?

IT翻訳の世界ではcopy=「コピー」と訳すのが一般的のようですが、ソフトウェアや著作物に限っては「コピー」という訳をうかつに使ってはならないと思います。先日もレビューの仕事をしていて「two copies of the software are running on the two servers」のような文章が「ソフトウェアの2つのコピーが2台のサーバーで実行されている」などと訳されているのを目にしました。この文章が言おうとしていたのは、プライマリーとバックアップの両方のサーバーで同じソフトウェアが実行されているということだったので、そのように訳文を直してしまいましたが。
かなり前には、ソフトウェアのGetting Startedのようなドキュメントの「Before start installation, please obtain a copy of the Installation Guide.」という文が「インストールを開始する前に、インストールガイドのコピーを入手してください」と訳されているのを見たことがあります。これでは読者が「複写機でコピーしろって?」と勘違いしてしまいそうです。
CNET Japanの記事「Windows 7ネットブックの関係--課題は価格と機能のバランス」(http://japan.cnet.com/special/story/0,2000056049,20389880,00.htm)でも、copy ofがそのまま「〜のコピー」と訳されているようです。

低迷するPC市場において唯一急成長している分野として、ネットブックは明らかにMicrosoftが無視することができない製品カテゴリだ。と同時に、たった200〜300ドルで販売されるコンピュータは、MicrosoftがこれまでにWindowsのコピーで手にしてきたような売り上げを得る機会とはならない。

英語版(http://news.cnet.com/8301-13860_3-10194136-56.html)では、

As the only fast-growing part of an otherwise sluggish PC market, Netbooks are clearly a product category that Microsoft can't afford to ignore. At the same time, computers selling for only a couple hundred dollars don't give Microsoft the opportunity to get the kinds of revenue for each copy of Windows that it is used to receiving.

と書かれています。「Windowsのコピー」だと、なんだか海賊版みたいではありませんか?
「コピー」という表現は別のところでも使われています。

 Aggarwal氏の試算では、MicrosoftWindows 7以前、ネットブック向けに販売されたWindows XPで1コピー当たり23ドルを得ていた。Windows 7の1コピー当たりの売り上げは、Home Premiumでは58ドルにもなり、Windows 7 Starterでは25ドル前後になると見積もっている。Aggarwal氏は、成熟市場においてネットブックの5分の4は、この比較的高価格のバージョンで出荷され、一方Starter Editionを搭載するのは20%にすぎないと計算している。

 新興市場ではMicrosoftは「Home Basic」オプションも用意する予定で、Aggarwal氏は、これが売り上げの大半を占めることになると予想している。だがAggarwal氏は、それでもWindows 7 Home Basicの1コピー当たりの売り上げは、ネットブック向けのWindows XPに比べて17ドル高くなると見ている。


Before Windows 7, Aggarwal estimates that Microsoft was getting $23 for each copy of Windows XP that sold onto a Netbook. With Windows 7, Aggarwal said he is estimating revenue as high as $58 per unit for home premium, with Windows 7 Starter fetching around $25. Aggarwal figures that four-fifths of Netbooks in mature markets will ship with the pricier version, compared to just 20 percent running Starter Edition.

In emerging markets, Microsoft will also have a Home Basic option that Aggarwal figures will account for the bulk of sales. Even still, though, Aggarwal is assuming Microsoft will get $17 more for each copy of Windows 7 Home Basic than it did for Netbook sales of Windows XP.

ソフトウェアを数えるときの単位は「本」でよいのではないでしょうか。