話の流れを追わずに訳せますか?

ふだんケーススタディーなどの翻訳レビューの仕事をしていて不思議に思うのは、話の流れを考えずに訳していると思われる訳文にしょっちゅう遭遇することです。原文と見比べると正しそうなんだけれど、訳文だけ読むと、意味不明とまではいかないけれど何を言いたいのかがよくわからないということはたびたびあります。
似たような訳文がCNET Japanの記事(http://japan.cnet.com/special/story/0,2000056049,20395233-2,00.htm)にありました。

最大の問題の1つは、規格のサポートに一貫性がないことだ。画像については、ほとんどのブラウザがJPEG形式、GIF形式、PNG形式でなんとかうまくやっている。しかし動画の場合、MozillaOgg Theoraを標準でサポートしているが、一方でSafariGoogle ChromeH.264規格に傾いている。前者はライセンス供与やロイヤリティーといった制限なしに配布することができるが、後者は現在、動画コンテンツの提供により広く使われている。

まず、「画像については、ほとんどのブラウザがJPEG形式、GIF形式、PNG形式でなんとかうまくやっている」に続く「しかし」の後が「画像については…」と対立する内容になっているでしょうか。もう一つ、「前者は…」と「後者は…」が「が」でつながれているにもかかわらず、「が」の前後が対比になっていないような気がします。
原文(http://download.cnet.com/8301-2007_4-10266230-12.html)にはこう書かれています。

One of the biggest issues is inconsistent standards support. For images, most browsers get by fine with JPEG, GIF, and PNG formats. But in video, Mozilla has built in support for Ogg Theora, while Safari and Chrome are inclined toward the H.264 standard. The former may be distributed without licensing and royalty constraints, but the latter is more widely used to supply video content today.

冒頭で「標準のサポートが統一されていない」と述べているので、その後に続くのはinconsistenの具体的な説明です。静止画の場合は、ほとんどのブラウザーJPEG、GIF、PNGが適切に表示されるのに対して、動画の場合はどの形式がサポートされるかがブラウザーによって異なるということですよね。次のThe formerとthe latterの対比については、この文だけを読むとわからないかもしれませんが、「H.264形式で配信するにはライセンス料の支払いが必要らしい」ということを知っていれば、「前者はライセンシングや使用料の制約を受けずに配信できるが、現在のビデオコンテンツ配信には後者のほうが広く使用されている」などと訳せるはずです。
翻訳者自身が見直しの段階で訳文だけを読んで意味が通じることを確認していれば、こんなことにはならないはずですが、「原文に忠実」であればOKという風潮がIT翻訳業界ではまだまだ残っているんですね。