原因・理由を先に述べるか後に述べるか

“「IE 9」でブラウザへの本気度を示したMS--技術面での巻き返しを図る”という記事(http://japan.cnet.com/special/story/0,2000056049,20403909,00.htm)の冒頭の部分です。

 Microsoftは米国時間11月18日、「Internet ExplorerIE)9」について語り、ブラウザにおける主導権を取り戻そうとしていることを示した。

 IEは依然として、インターネットで最も有力なブラウザだ。しかし、Microsoftが1990年代のブラウザ戦争でNetscapeを打ち破り、ブラウザへの取り組みを縮小した結果、IEは残念ながら、いわばテクノロジ面での敗者になってしまった。

 それによって、ライバルが発展する機会が残された。最も顕著なものが「Firefox」で、現在ウェブサーファーの4分の1に使われている。また、Appleの「Safari」は、今では「Mac OS X」だけでなく「Windows」上でも動作する。さらにGoogleの「Google Chrome」が、ウェブを高速化してアプリケーションのための優れた基盤にすることを目指している。

 しかしMicrosoftは、IE開発に再びリソースを投入しており、ロサンゼルスで開催の同社Professional Developers Conferenceでは、そうした努力の成果がいくつか紹介された。特に、Windows部門担当プレジデントのSteven Sinofsky氏は、テキストとグラフィックスに対するIE 9の新しいハードウェアアクセラレーションを公開した。

この第2段落〜第3段落の内容は読んで理解できるでしょうか? 理解できるという人に質問したいと思います。

  1. IEは依然として、インターネットで最も有力なブラウザである」→「しかし、Netscapeを打ち破り、ブラウザへの取り組みを縮小した結果、テクノロジ面での敗者になってしまった」という論理の流れは自然ですか? なぜMSは好きこのんで、取り組みを縮小するという敗者への道を選んだのでしょうか。
  2. 「それによって」の「それ」が指しているものは何でしょうか? 「いわばテクノロジ面での敗者になってしまった」だとしたら、そのことが「ライバルが発展する機会を残した」のでしょうか? IEは結局、誰に敗れたのでしょうか?

原文(http://news.cnet.com/8301-30685_3-10400638-264.html)での記述は次のとおりです。

With Internet Explorer 9, Microsoft showed Wednesday it's trying to retake the browser initiative.

IE remains the Net's dominant browser. But perversely, it became something of a technology underdog after Microsoft vanquished Netscape in the browser wars of the 1990s and scaled back its browser effort.

That left an opportunity for rivals to blossom--most notably Firefox, which now is used by a quarter of Web surfers, but also Apple's Safari, which now runs on Windows as well as Mac OS X, and Google's Chrome, which aims to make the Web faster and a better foundation for applications.

Microsoft has been pouring resources back into the IE effort, though, and at its Professional Developers Conference in Los Angeles, some fruits of that labor were on display. In particular, Windows unit president Steven Sinofsky showed off IE 9's new hardware-accelerated text and graphics.

「依然としてインターネットで最も有力なブラウザでありながらIEが敗者になってしまった理由」は、after以降に書かれています。「Microsoft vanquished Netscape in the browser wars of the 1990s and scaled back its browser effort.」の部分です。Netscape勝利を収めてトップの地位が安泰になったところで「取り組みを縮小」するのは、理解できます。でも、それだけで「敗者」になるのでしょうか。次の段落のThatが指しているのは、直前の「(Microsoft) scaled back its browser effort」ですよね。MSが油断していたらFirefoxをはじめとするライバルたちが参入してきて、気が付いたらIEはa technology underdogになっていた。これではまずいということで、MSは巻き返しを図って「pouring resources back into the IE effort」していたというわけです。
なぜ、英文ではスムーズに理解できる論理が日本語では不自然になるかというと、一つのセンテンスの後半にある部分を日本語訳で前の方に持ってきてしまっているからです。英語の述語をそのまま日本語でも述語にしようとするからだと思いますが、センテンスを1つだけ訳すならこれでもよいかもしれません。でもこのセンテンスは段落の一部であり、段落は記事の一部ですよね。だとしたら、個々のセンテンスの中で記述が完結しているわけではないので、前後とのつながりを考えて訳す必要があると思います。
「英語話者は主張の後に必ずその理由を述べたがる」という記述をどこかで見たことがあります。「〜は〜である。というのは〜だからだ」という英文は確かにしょっちゅう見かけます。一方、日本語では「〜だから〜である」のように、理由を先に述べることが多いという記述もどこかで見ました。日本人の性格とひとくくりにしたくはありませんが、理由を後で述べている英文を訳すときに、理由を前に持ってきてしまうのは、そのほうが日本人にとって読みやすいからでしょうか。でも、ここで引用した文章の場合は、後から述べる理由がそのセンテンスの中では終わっていないんですよね。「IEが敗者になった理由」は、次の段落にまで続いていると私は解釈しました。ということは、日本語でも同じ順序で説明しないと、論理の流れが違ってしまいます。いくら原文に忠実に訳していても、原文のThatが指しているものと日本語の「それ」が指しているものが違っていたら、誤訳になってしまうかもしれません。