TradosのWebサイトがマーケティング翻訳のお手本になりそうにない件

先日、オンサイトの仕事に行ったら、そこの会社で用意してもらったメールアドレスあてにTrados Studio 2009のダイレクトメールが来ていました。コスト削減を売りにしてますが、同じものを二度訳さないようにしたければ、翻訳メモリーの維持管理に相当の手間暇がかかるということは書かれてませんでした。そりゃそうだ。
他にも、2009を使うとこんなことができるという記述があったような気がしますが、その中に「SDLチームソリューション」と「SDLサーバーソリューション」へのリンクがあったので、リンク先を見てみたらこんなことが書いてありました。

http://www.sdl.com/jp/language-technology/landing-pages/perfect-landscape/sdl-team.asp
チームのスイート製品では、業界をリードするSDLのサーバーテクノロジのメリットをすべて活用できますが、現時点ではSDLサーバーが提供する大規模なプラットフォームは必要でない小規模な環境にも対応します。

「現時点では、〜にも対応します。」…そのうち対応しなくなるのでしょうか。

SDLの堅牢なテクノロジアーキテクチャを基盤としたSDLチームの最新バージョンでは、SDLのサーバースイートの、インターネットベースのファイル共有を含むすべてのアプリケーションを使用することができます。 ただし、サーバーとは異なり、SDLチーム製品は、Microsoftのエントリーレベルの無料データベース製品、MS SQL Server Express上で稼動できます。デスクトップをスタンドアロンアプリケーションとして使用することで、ソリューションを強化したい企業に理想的なソリューションです。

「ソリューションを強化したい企業に理想的なソリューションです。」…この「ソリューション」って何のことでしょうか。さかのぼっていくと、ページ先頭の画像に重ねて表示されている「SDLチームソリューションのパワーを体験してください」というテキストに「ソリューション」がありますが、企業が強化したいソリューションって一体何のことでしょう??
英語版のページには、こう書かれています。

http://www.sdl.com/en/language-technology/landing-pages/perfect-landscape/sdl-team.asp
The Team suite provides users with all the benefits of SDL’s market leading Server technology, but on a smaller scale, making it perfect for those who do not currently require the much large platform provided by SDL Server.

Built on SDL’s robust technology architecture, the latest version of SDL Team offers users all of the comprehensive application found in SDL’s Server suite, including internet based file sharing. Unlike Server however, SDL Team products can run on MS SQL Server Express – Microsoft’s free, entry level database offering, making it the ideal solution for companies wishing to make the step-up from using Desktop as a stand-alone application.

「The Team suite」のメリットをアピールする、よくあるトーンの英文ですが、なぜ日本語版ではあれほどわかりにくい文章になっているのでしょうか。
まず、「Team」や「Server」というキャピタライズされた単語が、日本語版では一般名詞と区別が付かなくなってしまっているという問題があります。だから「サーバーとは異なり」の「サーバー」が「SDLのサーバースイート」と同じものであるということがわかりにくい。Server technologyというのは、以前からある製品のテクノロジーのことですよね。ただ、Server製品は大きな企業向けで、したがってお値段もそれなりにするので、導入をためらっていた企業向けにon a smaller scaleで新たに発売したのがThe Team suiteなんだと思います。それをなぜ「対応します」などという表現でお茶を濁したのか。
次の段落も、英語版と日本語版で大きく意味が違ってしまっています。特に最後のところですが、「companies wishing to make the step-up from using Desktop as a stand-alone application」と「デスクトップをスタンドアロンアプリケーションとして使用することで、ソリューションを強化したい企業」とでは、言っていることが全然違います。英語版のテキストは、翻訳者が各自のローカルディスクに翻訳メモリー(TM)を持つという形態から、TM共有という形態にステップアップすることを指しているのでは?
想像ですが、日本語に訳した人は(翻訳したものとはどこにも書かれていませんが、日本語で書き起こしてこうなるとも思えないので翻訳物と見なします)、Desktop、Server、Teamの違いがよくわかってなかったのだと思います。売り込もうとしている製品のことを知らなかったら、マーケティングの文章なんて書けませんよね。たとえば「on a smaller scale」が抽象的すぎてわからなかったら、製品カタログを見てユーザー数の上限を調べるとか、書いた人に尋ねるとかすればいいのに。このページがどういう工程で作られたのかは知りませんが、制作時点で予算とかスケジュールとかマネジメントとかの問題があったとしても、エンドユーザーは「そういう事情があるのだから、わかりにくくてもしかたないよね」とは思ってくれません。これは別にSDLに向かって上から言いたいのではなく、自分に言い聞かせているのです。
こういう感じのドキュメントの翻訳は、時々私のところにも回ってきますが、どこの会社のをお手本にしたらいいんでしょうね。アップルの日本語版Webサイトは力を入れて作られていると思いますが、しばらく読んでいると「もう結構です」という気分になってきます。テレビでもiPadとかのCMが流れてくると、なんかむずむずしてチャンネルを変えたくなります。なぜだろう。アップルを好きな人には申し訳ないのですが。全体の構成はそのままでテキストだけ日本語にしても、「初めから日本語で書かれたような文章」にするのは無理なのかもしれません。