原文著者が伝えたいことを理解しなくて翻訳できるのか?

しばらく翻訳の仕事が続いていて、私にとっては比較的平穏な日々でしたが、レビューの仕事が回ってきてしまいました。オンサイトの仕事だとしかたないですね。レビューの対象はソフトウェア開発者向けのドキュメントなので、間違いなく「IT翻訳」に分類されるものですが、色々な点で相変わらずで、ため息が出てしまいます。英語の原文の著者が伝えようとしたことを理解しようとしていない翻訳者が、一人や二人じゃないんです。「ITだから原文に忠実に訳しておけばOK」などという翻訳会社がないわけではありませんが、「原文に忠実」って「英文の構造を忠実に日本語訳に反映」ではありませんよね。でも、そういう翻訳者が今まで仕事を続けてきたということは、そういうやり方が受け入れられているということですね。一体だれが受け入れているんだ。
私のところに回ってくるような案件に似た文書はいくらでもWeb上で見つかります。たとえば、http://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/bb399127.aspxの書き出しの文章である

Team Foundation ビルドのプロジェクト ファイルである TFSBuild.proj は、SolutionToBuild 項目グループのビルドに対してプロパティとターゲットを渡すことで、カスタマイズできます。 SolutionToBuild 項目グループのビルドに対してソリューションの追加や削除を行うこともできます。

は英語から翻訳されたものですが、この文章ってわかりやすいですか? 原文は

The Team Foundation Build project file, TFSBuild.proj, can be customized by passing properties and targets to the build in the SolutionToBuild item group. You can also add or remove solutions to build in the SolutionToBuild item group.

ですが、日本語訳は正しいと言えるでしょうか? 「SolutionToBuild 項目グループのカスタマイズ」というタイトルの文章なのに、「カスタマイズできます」はあえて強調する必要があるのでしょうか。強調といっても、太字にするとか音量を上げるとかではなくて、著者が読者に伝えたい「新情報」のことです。私がふだんの仕事で扱う文章のほとんどはプロのライターが書いたものであり、したがって論理的な文章の書き方がされているはずなので、日本語に訳すときもその論理の流れをくずすべきではないと思います。上に挙げた例はまだ短いほうですが、もっと長いセンテンスを日本語でも無理矢理1センテンスで訳してしまう人は結構います。わかりやすく伝えようとしたら、逐語訳から一歩踏み込んで文の構成を考え直すことが必要だと思います。とりとめのない感想ですが、レビューの仕事をしているとストレスがたまってしまうので、つい書き散らしてしまいました。