IT翻訳者の疑問

この業界に入って約20年。私の疑問は相変わらず解決しません。

「ツールバー」vs「ツール バー」

4月6日の日記で引用した記事の中に、ちょっと気になる記述があります。

 たとえば本書によると、英語の“Dialog”は“ダイヤログ”ではなく“ダイアログ”とカタカナ表記するのが正しく、“Toolbar”や“Taskbar”はそれぞれ“ツール バー”“タスク バー”といったように半角スペースが必要と書かれている。
http://www.forest.impress.co.jp/article/2008/03/28/mslangstyleguide.html

これを読んだ人が「ローカライズするときはカタカナ複合語の間にスペースを入れるものだ」と思い込んでしまうのではないかと心配です。これはあくまでもマイクロソフトの好みですから。日本語の文中にスペースを入れるというスタイルは、少数派のはずです。たとえば、手元にあったオライリーの『入門XML』の目次でカタカナ複合語を拾ってみると

  • イベントディスパッチャ
  • オープンスタンダード
  • コンテキストノードセット
  • スタイルシートプロセッサ

といった具合です。以前どこかで、複合語を区切らずに表記するのは好ましくないという意見を見かけましたが、そんなことを言っているのはローカリ関係者だけではないでしょうか。
末端の翻訳者としては、クライアントの好みがはっきりしているのならばそれに合わせますが、この手のルールはなかなか基準がはっきりしないのが困りものです。現に、マイクロソフトのスタイルガイドで「ツール バー」が正しいと規定されているにもかかわらず、https://www.microsoft.com/language/ja/jp/search.mspxで「toolbar」を検索すると「ツール バー」と「ツールバー」の両方が見つかります。もしかして、同じマイクロソフトの文書でも、製品がAccessならば「ツールバー」、.NET Frameworkならば「ツール バー」のように表記を使い分けるのでしょうか。このような、エンドユーザーから見ればどっちでもいいことの判断に翻訳者のエネルギーの何パーセントかが使われていることを考えると、無駄だなあと思います。
前にも書いたような気がしますが、文字データとしては「ツールバー」と「ツール バー」が別物として扱われることを考えると、余計なスペースは入れない方がよいと私は思います。Googleで検索して見つかったWebページを開いたときに、頭から読んでいくのが面倒なときはブラウザの検索機能を使ってキーワードを検索しますが、Webページで「スタイル ガイド」などという表記が使われていると「スタイルガイド」を検索しても全然ヒットしないんですよ。