文字間スペースの調整は誰の仕事か?

新しいクライアントの仕事をすることになって、各種指示書に目を通していて、「全角文字と半角文字の間にはスペースを入れる」などと書かれているのを見るとため息が出てしまいます。文字間にスペースを入れるという規則には、いろいろな例外がくっついてくるからです。句読点の前後が半角でも入れないとか。やってるうちに慣れますが、いくらか余計な時間をとられます。こういう規則を作る側の人と直接話したことはないのですが、いったいどういう理由で、ある企業はスペースを入れ、別の企業はスペースを入れていないのでしょうか。「ITだから」ということではありませんよね。
http://www-01.ibm.com/support/docview.wss?uid=pub3gc88807903からダウンロードできるIBMの翻訳ガイド(2006年発行)には、

翻訳文では日本語と英語が混在した文章になりますが、このスペースが入っていないと半角文字が押しつぶされたような感じになり、読みづらい体裁になってしまいます。

と書かれています。また、Mozilla Japanの「和訳作業ガイド」(http://www.mozilla-japan.org/jp/td/guide.html)には

見やすさのため、日本語と英数字の間には半角スペースを挿入してください。

と書かれています。他のプロジェクトでも、理由はだいたい同じだと思います。つまり可読性向上のためということですね。
出版物の場合は、組版ルールの1つとして「和文と欧文の間に全角1/4の空きを入れる」というのがあるそうですが、組版ルールというぐらいなので、文字間隔の調整は組版の段階ですればよいはずです。実際、クライアントからのスタイルの指定がなかったため翻訳会社のPMから「取りあえずMSスタイルで」と言われたのでその通りにしたら、DTPオペレーターから「InDesign組版するときに文字間のスペースが邪魔だったので削除しちゃいました」と言われたことがあります。昔はどうだったか知りませんが、今は機械でできるはずですよね?
私がふだんの仕事で扱う文書は、最近では印刷物よりもWebで公開されるものが圧倒的に多くなっています。そのような文書には組版という工程はありません。しかし、可読性というのは全角文字と半角文字の間のスペースだけで決まるものではありませんよね。文字の大きさ、書体、行間隔、1行の長さなど、さまざまな要素の調整が必要になるはずであり、それはWebデザインの範疇ではないでしょうか。もし、「全角文字と半角文字の間にスペースがなかったら読みにくい」が事実ならば、翻訳者だけでなく、Webブラウザーで読まれる日本語テキストを書く人全員がそのようにしなければなりません。こういうブログもそうだし、掲示板の書き込みもTwitterも。そんな面倒なことやってられますか?
IT関連の記事が掲載されているWebサイトでも、初めから日本語で書かれた文章では全角文字と半角文字の間にスペースなど入れていないのがほとんどですが、そんなに読みづらいとは思いません。確かにMS Pゴシックなどで表示すると「BI製品」の「I」が見えなかったりしますが、メイリオにすれば見やすくなります。スペースがまったくないのは確かにあまり美しくないので、Webブラウザー側でもうちょっとなんとかしてほしいものですが、IEを作っているMicrosoftでさえ、そんなことをやる気はなさそうです。
全角文字と半角文字の間にスペースを入れるのに理由などなくて、単に発注側の趣味だったとしても、仕事をいただく側としてはそれに従いますが、日本語で文章を書くときにしないことになぜ、翻訳業界のごく一部ではこれほど時間をかけているのか、不思議でしかたありません。