https://www.nvidia.com/ja-jp/の先頭部分に表示される記事の1つの見出しに「NVIDIA、耐障害性に優れた量子コンピューティングのための CUDA-Q プラットフォームを拡充」というものがありますが、「耐障害性に優れた量子コンピューティング」とはいったい何なのでしょうか。「詳細を見る」のリンク先はなぜか英語版のページで、その見出しは「NVIDIA Expands Open Source CUDA-Q Platform for Fault-Tolerant Quantum Computing」となっています。
nvidianews.nvidia.com
つまり「耐障害性に優れた量子コンピューティング」とはFault-Tolerant Quantum Computingのことのようです。なぜこれが注目されているかは、この英文記事の次の段落に書かれています。
Fault-tolerant quantum processors with logical qubits are essential for useful quantum computing, allowing systems to overcome the errors inherent in physical qubits so they can execute the larger computations needed for practical applications such as drug discovery, financial modeling and materials development.
物理的量子ビットにつきものの誤りが発生しても訂正ができるということですね。これが「耐障害性に優れた」なのでしょうか。「障害」という表現は少々オーバーに聞こえます。「フォールトトレラント」というカタカナ語は何十年も前から日本語で使われているので、それでよいような気もしますが、文字数の多さから避けられたのでしょうか。
これがこの企業独自の概念ならば、その企業の好みに合わせて訳語を選べばよいのですが、Fault-Tolerant Quantum ComputingはNVIDIA独自というわけではないようです。しかも近年になって突然現れたものでものなく、1990年代に確立した理論だそうです(ChatGPTに教えてもらいました)。そのため、Fault-Tolerant Quantum Computingに関する文献や記事は既に多数存在します。
その中には日本語のものも多数あるはずですが、Webで「耐障害性に優れた量子コンピューティング」を検索してもこのNVIDIAのページを含めて3件しか見つかりません。では他の組織や企業は日本語でどう表現しているのでしょうか。「Fault-Tolerant Quantum Computing 量子」で検索すると、「フォールト・トレラント量子コンピューティング」「誤り耐性量子コンピュータ」「誤り耐性量子計算」などが使われているのがわかります。
www.ibm.com
www.deloitte.com
journal.ntt.co.jp
NVIDIAのWebサイトでも、先ほどの英文記事の日本語版では「誤り耐性量子コンピューティング」という表現が使われています。
このようにいろいろな訳語がある状態では、Fault-Tolerant Quantum Computingという概念に関する日本語の文献を探している人がこれらをすべて見つけるのが難しくなります。せっかくのコンテンツが埋もれてしまうのを避けるには、前述のIBMのページのように、英語での表記を併記するのがよいと思います。
フォールト・トレラント量子コンピューター(fault-tolerant quantum computer、FTQC)は、エラーがあっても正しく動作するように設計された量子コンピューターです。