IT翻訳者の疑問

この業界に入って約20年。私の疑問は相変わらず解決しません。

名詞needの訳は「ニーズ」だけ?

Trados Studio 2024が間もなく登場するそうですが、そのウェビナーの案内のメールの文面がちょっと意味不明でした。同じ文章がhttps://www.trados.com/jp/spotlight/get-ready-for-trados-studio-2024/にあったので、ここから引用します。

今、私たちはテクノロジーが進化する驚異的な時代に生きていますが、多様なニーズを持つ人々が取り残されてしまうこともあります。当社はこうした状況を考慮して、視覚障がいを持つユーザー向けの機能を多数リリースし、Trados Studio 2024を市場で最もアクセス性に優れ、機能の充実した翻訳支援ソフトウェアにします。 

最初のセンテンスがメールにもあったのですが、多様なニーズを持つだけで取り残されるとは、とんでもない時代ですね。

英語版のページ(https://www.trados.com/spotlight/get-ready-for-trados-studio-2024/)を見てみましょう。

We are currently living in an incredible era of technological advancements, however, sometimes people with diverse needs get left behind. Considering this, Studio 2024 will become the most accessible, feature-rich CAT tool on the market with the launch of a number of features for the visually impaired. 

英文のneedsを反射的に「ニーズ」と訳したと推測されますが、そのpeopleが何を必要としているのかを、もう少し考えようとは思わなかったのでしょうか? 英辞郎には「people with special needs の意味・使い方・読み方」の説明がありますよ。

eow.alc.co.jp

「多様な」も英文のdiverseを反射的に訳した結果だと思いますが、これはpeopleという集団全体についてのことですよね。一人の人間に注目したときに、身体障害(視覚・聴覚・言語・肢体・内部)、知的障害、精神障害のどれか一つでもあったら、その人はwith needなのだと思います。

あと、the visually impairedの訳し方にも、もう少し神経を使ったほうがよいのではないでしょうか。「ユーザー」は既に製品を買った人のことですよね。

これが単なるソフトウェアメーカーのWebサイトならともかく、Tradosを販売している会社はローカライズのサービスも提供しているので、TradosのWebサイトはマーケティング翻訳のお手本であってほしいのです。