私自身も山岡洋一氏の著書を読んで気付いた口なので偉そうなことは言えませんが、英語のincludeを機械的に「〜を含む」と訳すと不自然になることがあります。英単語のあぶない常識―翻訳名人は訳語をこう決める (ちくま新書)の“INCLUDEは「含む」か”の項に
日本語の「含む」は、例外的なものや特殊なものをあげるか加えることを意味するのが通常だが、includeの目的語になるのは、代表的・典型的なものであることの方が多いからである。
とあるように、includeという動詞に続く名詞が「例」であることは珍しくありません。しかし、そのように訳されていないケースをたびたび見かけます。
先日も、ある企業が販売しているアプリケーションをカテゴリー別に紹介する文書の翻訳レビューをしましたが、
XXXX applications are 〈XXXXというカテゴリーの特徴の説明〉. These applications include:
- application_a
- application_b
(XXXXはカテゴリー名)
という文章の「These applications include」がことごとく「これらのアプリケーションには以下が含まれます」と訳されていました。
英英辞典でincludeの意味を調べると「have as a part, be made up out of 」(http://www.onelook.com/?w=include&ls=a)などと書かれていますが、includeの主語は「集合」であり、目的語はその要素ですよね。なので、日本語でも主語が何らかの集合であることが明らかで、その要素を列挙するときならば、「含む」と訳しても問題はないはずです。前述の「これらのアプリケーションには〜が含まれます」は判定が微妙というか、間違いとは言い切れませんが、私ならば「代表的なアプリケーションは次のとおりです」などと訳します。
ちょっと別の例を考えてみました。
- Our lunch menus include sandwiches, pizzas, and pastas.
- Our lunch menus include bread rolls, salad, and coffee/tea.
どちらも主語はlunch menusですが、訳し分けないとおかしなことになりますね。lunch menusという集合の要素について述べているのか、個々のluhch menuという集合の要素について述べているのかは、文脈から判断しなければなりません。常識で考えると「当店のランチメニューにはサンドイッチ、ピザ、パスタなどがあります」と「当店のランチメニューにはパン、サラダ、コーヒーが含まれます」ですが、店によってはサンドイッチとピザとパスタのコースがあるかもしれないし、パンとサラダとコーヒーだけの軽いコースもあるかもしれません。