5月15日に、「grantという動詞が使われているわけではないのに『権限を許可する』という表現が使われているのは、訳した人の癖だろう」という意味のことを書きましたが、http://msdn2.microsoft.com/ja-jp/library/ms187113.aspxからリンクしている「GRANT (データベースの権限の許可) (Transact-SQL) 」というページ(http://msdn2.microsoft.com/ja-jp/library/ms178569.aspx)でgrantが「許可する」と訳されているのですね。ということは、翻訳者個人の癖というよりは、SQL Serverの用語体系でこのように決まっているようです。
grantの意味を英英辞典で調べると、
to give someone something or allow them to have something that they have asked for:
(Longman Dictionary of Contemporary English)
となっています。「何かを与える」という意味で使われるときと、「願いを聞き入れる」という意味で使われるときがあるので、目的語に応じて訳し分ける必要があります。それなのに、「用語集」でgrantという単語の訳を統一しようとするのは、無理があります。
今回問題になっているgrantの目的語は、grantコマンドの引数であるpermissionですが、このpermissionが「許可」ではなく「権限」と訳されているのも納得いきません。日外アソシエーツのコンピュータ用語辞典ではpermissionの訳は「許可」で、この訳が一般的なはずです。「権限」というのは個々のユーザーに与えられているものですが、permissionはどちらかというと、ファイルやデータベースなどのリソース側から見てアクセス制御をするためのものというイメージがありませんか? たとえば、「(UNIXで)file permissionsが755に設定されている」というような場合です。grantの訳を「許可する」に決めた以上、目的語も「許可」ではおかしいということで「権限」になったのでしょうか。