「逆茂木型」

理科系の作文技術 (中公新書 (624))』の著者木下是雄氏は、文章の構造を樹木にたとえて、修飾語(枝)が多すぎて論述の主流(幹)がわかりにくくなっている文章を「逆茂木型」と呼んでいます。例として、

長い航海を終って船体のペンキもところどころはげ落ちた船は、港外で、白波を立てて近づく検疫のランチの到着を待っている。
(83ページ)

という文章を挙げ、日本人はこのような、最後まで読んで初めて全体像がつかめる文章でも抵抗なく読めるが、理科系の文書では「逆茂木型」は避けるべきだと述べています。この「逆茂木型」がはびこる理由としては、次のように書かれています。

 私たちがとかく逆茂木型の文を書きやすい根本原因は、修飾句・修飾節前置型の日本語の文の構造にある。しかし、逆茂木がむやみにはびこったのは翻訳文化のせいにちがいない。多くの欧語では、長い修飾句や修飾節は、関係代名詞を使ったり分詞形を使ったりして、修飾すべき語の後に書くことになっている(図5.1の(B)型の構造は、このことからの自然の帰結とみられよう)。こんにちの逆茂木横行の誘因は、私たちが、そういう組立ての欧文のへたな翻訳――漢文に返り点をつけて読む要領の直訳――に慣らされて鈍感になったことだろう。
(82ページ)

この本の初版は1981年で、当時と今とでは事情が異なっているでしょうが、耳が痛いですね。IT翻訳の場合は原文に忠実に訳していればOKとされることが多いようですが、日本語として読みやすくするための工夫を怠ってはならないと思います。