話の筋を追わずに訳せますか?

10月9日のCNET Japanの記事「YouTube買収額決定の経緯とグーグルの意図---明かされた10億ドルの上乗せ」(http://japan.cnet.com/special/story/0,2000056049,20401305,00.htm)からの引用です。

創立後18カ月の新興企業に対するこの大型買収は、テクノロジ分野の査定価格の高騰に大きな役割を果たした。YouTubeはほとんど売り上げを生んでいなかったが、全株式交換によりGoogleが支配権を持つことで、マスエンターテインメントの代表格であるYouTubeも変わるだろうと多くの人々が考えた。同時に疑り深い人々からは、Googleは決してこの金額を回収することはできないだろうという批判もあった。

「全株式交換によりGoogleが支配権を持つことで、マスエンターテインメントの代表格であるYouTubeも変わるだろうと多くの人々が考えた」という文は、「それまで売上がほとんどなかったダメ会社を建て直すために、お金持ちのGoogleがポンと16億5000万ドルも出した」と読み取れるのですが、記事の著者はそう言いたかったのでしょうか。「Googleはなぜ、10億ドル上乗せしてまでYouTubeを買収したか」がこの記事のテーマであり、「全株式交換により」以降はその答えを示しているはずなのですが、読んでいる側としてはどうもすっきりしません。
原文(http://news.cnet.com/8301-31001_3-10360384-261.html)を見てみると、
The blockbuster acquisition for the 18-month-old start-up played a large role in sending valuations in the tech sector skyrocketing. Although YouTube made little revenue, the all-stock transaction gave Google control of a company many believed would change the face of mass entertainment. It also led to criticism from skeptics who thought that Google would never get its money back.

と書かれています。「大衆娯楽のあり方を変える可能性がある会社」だからGoogleが欲しがったということですよね。同じ記事の後の方には、

簡潔に言えば、同氏は、Googleがこれだけの金額を出さなければ、競合他社、おそらくはMicrosoftかYahooが、この人気上昇中のビデオサイトを持っていってしまうだろうと考えていた。

YouTubeにおけるユーザーからの支持にわれわれが確実にあずかれるよう、最終的に割増金を含めた16億5000万ドルという結論に達した

という記述もありますし。

私がふだんレビューの仕事で遭遇する訳文でも、こんな感じで強引に文章の形にしているケースを時々見かけます。引用した「マスエンターテインメントの代表格であるYouTubeも変わるだろうと多くの人々が考えた」という文は、文としての形は整っていても前後とのつながりが不自然なので、その時点で原文の解釈を見直すべきです。the faceが「代表格」と訳されていますが、2006年の時点でYouTubeは大衆娯楽の代表格といえる存在だったでしょうか。リーダーズ英和辞典にも載っているとおり、「change the face of…」には「…の様相を一変させる」という意味があります。あとはa companyの後の関係代名詞が省略されているところを補って考えれば、「YouTubeも変わるだろう」という訳にはならないはずですよね。著者の論理の展開を追いかけながら訳すのは当たり前のことですが、機械的に英語の単語を日本語に置き換えながら訳文を作っていくと、こうなってしまうのかもしれません。