trados.comには、Trados Studio関連のページ以外にもterminologyに関するコンテンツがあります。「Implementing terminology - take a hiatus on tradition」というタイトルのブログもその一つです。
https://www.trados.com/blog/implementing-terminology-take-a-hiatus-on-tradition/
ここではterminologyという単語がimplementという動詞の目的語として使われていますが、この文脈でのterminologyはどういう意味で使われているのでしょうか。日本語版のページを見ると、タイトルは「用語集の導入 - 過去からの脱却」となっています。つまりここでもterminology=「用語集」のようです。
https://www.trados.com/jp/blog/implementing-terminology-take-a-hiatus-on-tradition/
名詞terminologyを「用語集」と訳すと決めたとして、それは動詞implementの目的語となったときも妥当なのでしょうか。動詞implementの意味は、「やると決めたことを実際にやる」ですが、「用語集」は「こと」というより「もの」ですよね。ですので「実施」や「実装」ではなく「導入」を選んだと推測されます。たとえば、ある会社には今まで「用語集」がなかったけれども、これからは「用語集」を運営しようと決めた後で「導入」するといったことを想定しているのでしょうか。
なんでこうなったかを考えてみましたが、terminologyという言葉が表す概念が2つあるにもかかわらず、片方の概念(A set of terms and/or names used in a particular subject field.)についての日本語訳を他方の概念(The study of designations and their associated concepts.)にも機械的に当てはめてしまったからだと推測されます。確かに、訳語の統一は大切ですが、それは円滑なコミュニケーションを目的として同じ概念を指す言葉をひとつに絞るためですよね。このブログの日本語版の読者は、「用語集」という言葉を目にするたびにどういう概念を頭に思い浮かべるでしょうか。英日ローカリゼーション業界で「用語集」といえば、一般的には英語の用語と日本語の訳語のリストであり、そのエンドユーザーにはExcelシートとして、あるいは翻訳支援ツールに一体化された用語データベースとして支給されるものです。そのようなことを考えながらブログを読んでいくと、最後に次のようなフレーズがありました。
「誰でも用語集を使用できますか?」と質問されたら、もちろん「はい!Tradosなら可能です」と答えることができます。
ちなみに英語版では、次のように書かれています。
To answer the question “Can anyone use terminology” the answer is a firm “Yes! You can with Trados”.
Tradosがなかったら、「誰でも用語集を使用する」ことは難しいのでしょうか? このフレーズを最後に置いているのは、その前の部分でTradosでの具体的なterminologyのツールを紹介しているからですが、そのセクションの冒頭に戻ってみます。
Getting started with terminology
So, let’s say you’re ready to embrace terminology and all the benefits it can bring, but where do you begin? Below are some of the typical starting topics.
用語集の導入
用語集とそのすべてのメリットを活用する準備が整っているとは言っても、何から着手しますか?以下に、その主なトピックを挙げました。
やはり、get started withやembraceの対象であるterminologyを「用語集」と訳すのは無理があるように思います。「ある分野のtermを体系的に整理すること」を日本語の既存の単語の組み合わせで表現するのはなかなか難しいので、「ターミノロジー」でいいのではないかと思いますが、このような場面でもカタカナ語は避けるべきなのでしょうか。