サポート情報の翻訳

現在翻訳者として参加しているプロジェクトでは、1冊のマニュアルを何人かで分担して訳しているのですが、運悪く、サポート情報の部分が割り振られてしまいました。最新マニュアルの入手方法だの、各国のサポート窓口の電話番号だのが書かれている部分です。細かい指示が多いから面倒なんですよね。参考資料として、その翻訳会社が少し前に担当した同クライアントのマニュアルが渡されたのですが、ちょっと古かったようでサポート情報の内容が若干違っています。参考資料から丸写しできない部分をどうしようかと思い、Webで公開されているそのクライアントのマニュアルを検索してみたところ、同じ英文を日本語化したと思われるものがいくつか見つかりました。それがまた、少しずつ訳が違うのです。いったいどうしたものか。
私が担当するサポート情報は新規翻訳扱いなので、何も見ずに翻訳するということも考えられますが、英文が同じなのに日本語訳で変化を付ける必要もありません。他のマニュアルでは既に訳されているのになぜ新規扱いかというと、翻訳メモリがマニュアル単位(あるいは製品単位)で作られているからですね。サポート情報なんてどの製品でもたいていは同じなのに、製品ラインが違うので、既訳の翻訳メモリが利用されていないのです。これは翻訳者や翻訳会社の側ではどうしようもないので、ソースクライアント側でなんとかしていただくしかないです。英語版のライターは、各マニュアル共通のサポート情報を“マスター”からコピー&ペーストしているのだと思いますが、日本語版でも、その“マスター”を一度だけ翻訳すれば、あとはコピー&ペーストで済むはずです。
ソフトウェアだったら、再利用できる部分はサブルーチン化したり、インクルードファイル化したりしますが、ローカライズの現場ではそのインクルードファイルを展開した状態で翻訳しているんですよね。「100%マッチは何もしなくていいから支払いなし」とか、コストには敏感な一方でそういう無駄なことをしているんだから。私が担当しているサポート情報の部分は2,000ワード弱なので、コストの点では大したことないかもしれませんが(といっても、そのソースクライアントのマニュアルは年30冊ぐらいリリースされているので、単純に計算しても2,000×ワード単価×30となります)、元の英文が同じなのにマニュアルによって表現が違う(たとえばサポートサービスの呼び名がマニュアルによって少しずつ違う)ことによるデメリットは無視できないと思います。