やっぱりカタカナ複合語の区切りはいらないと思う

オンサイトの仕事をしていると、小さめの案件が次々にやってきますが、相変わらず表記スタイルをはじめとする、細々とした指示に振り回されてばかりです。こんな細かいことをいったい誰が気にしているのか。「もうやめよう」と言いたい。
なかでも面倒なのが、カタカナ複合語の区切りです。ご存じのとおり、IT翻訳業界には

という3通りの表記スタイルがあります。後の2つは基本的に、英語の単語の区切りに合わせてスペースまたは「・」を入れるというものですが、それだけで済まないのがIT翻訳業界です。「原文で2語がハイフンでつながれていたら日本語でも区切りは入れない」という規則に従った結果、訳文の中で「エンド・ユーザー」と「エンドユーザー」が混在していたということはよくあります。さらに、「お客様の好み」で、特定の複合語は区切りなしで表記することになっていたりします。たとえば、「メール・アドレス」ではなく「メールアドレス」という指示ですが、それが用語集に反映されていればまだましで、MS Word形式の翻訳指示書の中やExcel形式の「フィードバック集」に書かれていたりします。それをうっかり見落とすと、クライアントのQAでエラー扱いされて翻訳会社の評価にかかわるという話もあるそうですが、このようなことに費やすエネルギーが、正直いってもったいないと思います。
日本翻訳連盟の標準スタイルではそこのところがどうなっているかと思って『JTF 日本語標準スタイルガイド(翻訳用)第 1.1 版』を見てみたら、

JTF スタイルガイドを作成するにあたり、カタカナ複合語の上記 3 種類の表記方法のうち、現時点では「(3)*1何も挿入しない」表記方法を使用しないことにしました。理由は、語に区切りを入れないと、機械翻訳時に未知語を判定しづらい場合があるからです。

となっていましたが、「機械翻訳時に未知語を判定しづらい場合がある」という理由にびっくりしました。この仕事を10年以上やっていますが、現場でこのようなことを聞いたことは一度もありません。私が扱うのは英語から日本語への翻訳ですので、日本語に訳したものをさらに機械翻訳にかけるということは考えにくいです。もし「機械翻訳時に未知語を判定しづらい」ことが本当に問題になるのであれば、日本語で文章を書く人全員がカタカナ複合語に区切りを入れなければなりません。私が書いているようなことは、スタイルガイドを決める前の議論の場でも出ていると思われますので、これ以上は書きませんが、やっぱり区切りはいらないと思いますよ。外国語のカタカナ表記である(カタカナ語として定着していない)場合だけ入れれば十分だと思います。だって、上記のルールが書かれているドキュメント自体も「スタイルガイド」ですし。

*1:本来は丸付き数字