IT翻訳者の疑問

この業界に入って約20年。私の疑問は相変わらず解決しません。

動詞「tweet」の訳し方

最近は私のところに回ってくる英日翻訳の案件でも「ソーシャル」関係のものが増えてきて、たとえばTwitter, Inc.以外の会社のサービスとTwitterとの連携について述べているような文章がちらほら現れるようになりました。ここで問題になるのがTwitter固有の用語の訳しかたです。クライアントは別の会社なので、基本的にクライアントから支給される用語集には載っていません。ある翻訳者はtweetという動詞を「つぶやく」と訳していましたが、これは正しい訳でしょうか?
確かに、日本語のWebサイトにある水色の正方形に「t」のボタンには、「この記事についてつぶやく」などというAltテキストがくっついていたりしますので、Webで普通に使われている「つぶやく」が正しいといえないこともありません。あるイベント会場で並んでいたときに、後ろにいた人(30代後半ぐらいの女性)が連れの人に向かって「今からつぶやく!」と言うのを聞いたことがありますが、何かにつけてtweetする人って結構いるんだと感心してしまいました。
でも、twitter.comのヘルプをみても、「つぶやく」という表現は使われていないんですよね。日本語の「つぶやく」は「小声でひとりごとを言う。」(大辞林)で、せいぜい近くにいる人にしか聞こえませんが、Twitterのtweetはひとりごとどころか、全世界に聞こえてしまいます。口で言う「つぶやき」はすぐに消えてしまいますが、tweetは本人が消去しない限りずっと残ります。この「つぶやく」という表現のせいで、かなりのTwitterユーザーが誤解をしているのではないかと思います。有名人の悪口だの飲酒運転しましただの、それを読むのは自分の親しい友達だけで、すぐに忘れ去られると思っているのではないでしょうか。
Twitter関係ではもう一つ、mentionという動詞があります。これも、正式にはどう訳すのかがわからなかったとき、Twitter.comのヘルプを見てびっくりしました。今はTwitter.comのヘルプでも「メンション」という表現が使われているので「メンション」でよいのだと思いますが、少し前に見たときは確か「@関連」だけでした。何をどうしたらこういう表現になるのか、しばらく悩みました。