IT翻訳者の疑問

この業界に入って約20年。私の疑問は相変わらず解決しません。

「たりたり」を使いたくない理由

昨日取り上げたWebページの別の部分にも突っ込んでみたいと思います。

Cognitive Services - AI ソリューション向け API | Microsoft Azure

「お客様の Cognitive Services の利用事例を見る」という見出しの下にある、AIRBUSの事例の概要です。

Cognitive Services を使用してイノベーションを加速させる

エアバスはコンテナー内の Anomaly Detector を利用して、航空機の正常性を監視し、潜在的な問題が発生する前にそれを解決したり、音声対応のチャットボットでパイロットのトレーニングを簡素化したりしています。

この「解決したり、簡素化したりしています」のような「たりたり」の使い方には違和感があります。その理由をいろいろ考えてみてはいるのですが、未だに決定版が見つかりません。

英語版を見てみます。

Cognitive Services—APIs for AI Solutions | Microsoft Azure

Accelerating innovation with Cognitive Services

Airbus uses Anomaly Detector in containers to monitor the health of its aircraft and fix potential problems before they occur, and to simplify pilot training with speech-enabled chatbots.

日本語版で「たりたり」で表現されている部分は、英語だとto monitor...and fix...とto simplfy...で表現されていて、リンク先の記事では冒頭に「Its latest advances include two groundbreaking innovations that use Azure AI solutions to reimagine pilot training and predict aircraft maintenance issues. 」という文章があります。この2つの他にも何かがあるわけではなく、この2つを伝えたいということなので、「たりたり」ではなくて「~をコンテナーで使用しています。その目的は航空機の正常性を監視し、潜在的な問題が発生する前にそれを解決することと、音声対応のチャットボットでパイロットのトレーニングを簡素化することです。」などとすればよいかと思います。

余談ですが、「潜在的な問題が発生する前にそれを解決したり」の「それ」は何を指しているのかが、わかりにくくないでしょうか。「潜在的な問題」のことですが、文字どおり解釈しようとすると意味不明ですよね。「潜在的な問題」を特定できた時点でその「問題」は発生していることにならないのか? 「潜在的な問題を解決する」にbefore they occurの意味をくっつけるとしたら、「潜在的な問題を、それが表面化する前に解決する」でどうでしょうか。

あと「パイロットのトレーニングを簡素化」だと、トレーニングの内容を部分的に省いたりするといったイメージがあるので、「複雑さをなくす」という意味が伝わるような表現に変えたほうがよいと思います。