Googleのヒット件数は訳語選択の基準になるか

訳語の候補がいくつかあるときに、どれを採用すべきかを翻訳関係者どうしで相談していると、「Googleで検索すると訳語Aは10,000件、訳語Bは30,000件だから訳語Bの方が多く使われている」などという人がいます。言わなくてもわかってると思いますが、件数というのはGoogleのキャッシュの中での件数ですよね。数字を単純に比較してもあまり意味はないと思います。同一の文章が複数のWebページに掲載されていることもありますし。たとえば、あるソフトウェアベンダーはマニュアルをWebで公開していますが、過去のバージョンもすべて揃っているので、同じ文章がバージョンの分だけカウントされていると思います。Webで使われている言葉を採用するときの基準は、使用数が多いか少ないかではなくて、信頼できるサイトで使われているかどうかではないでしょうか。匿名の個人のWebサイトとIT企業のWebサイトでは、信頼度が違うはずです。
たとえば、「Denial of Service」の訳として「サービス拒否」と「サービス妨害」が考えられますが、Googleで検索すると「サービス拒否」の方が多いようです。けれども、どちらを選択するかの根拠としては、

などが考えられます。
ちなみに、http://www.ipa.go.jp/security/ciadr/crword.htmlでは、「DoS attack (Denial of Service attack: サービス妨害攻撃)」という見出し語の説明の末尾に

DoS attack は、俗に「サービス拒否攻撃」、「サービス不能攻撃」と訳されることがあるが、サービスを拒否する攻撃ではないし、サービス不能な攻撃ではない。あえて表現すれば「不能化/不能に」する攻撃である。

と書かれています。訳語を選択した理由がはっきり書かれている用語集は信頼してよいと思います。
ついでに書いておくと、英和辞典ではdenialの意味が「否定、否認、拒否」などとなっていますが、英英辞典では

The denial of something to someone is the act of refusing to let them have it
COBUILD英英辞典)

です。自分が「拒否」するのではなく、「誰かに何かをさせない」という意味で使われているので、「妨害」の方が近いと思います。