IT翻訳者の疑問

この業界に入って約20年。私の疑問は相変わらず解決しません。

「〜は、〜できるようにします」

10月31日に取り上げた文章とその次の文章です。

各 SPSite オブジェクトは、サイト コレクションを表し、サイト コレクションの管理に使用できるメンバを持っています。AllWebs プロパティは、サイト コレクション内の最上位サイトも含めたすべての Web サイトのコレクションを表す SPWebCollection オブジェクトにアクセスできるようにします。

この「〜は、〜できるようにします」という訳文をよく目にするのですが、変じゃないですか? 「〜ようにする」は、心がけを表す主観的な表現ですよね。それを「AllWebs プロパティは、」で始まる叙述文で使うのは不自然です。自分の心がけを表すのに「これからは、遅刻しないように早めに家を出るようにします」と言うことはあっても、「彼は、これからは遅刻しないように早めに家を出るようにします」とは言いませんよね?
「アクセスできるように」は心がけというよりは、単に「目的」を表しているのだと思いますが、「します」という述語は弱すぎるというか、具体的に何をするのかが伝わってきません。
原文に戻ってみると

Each SPSite object represents a site collection and has members that can be used to manage the site collection. The AllWebs property provides access to the SPWebCollection object that represents the collection of all Web sites within the site collection, including the top-level site.

となっています。まだ「〜へのアクセスを提供します」という逐語訳のほうがマシですね。「The AllWebs property provides access to ...」は、前の文章の「サイト コレクションの管理に使用できるメンバを持っています」を受けて、具体的にどのようなメンバーがあって何ができるかを述べているわけですが、「AllWebsプロパティを使用すると、サイトコレクション内の最上位サイトを含むすべてのWebサイトのコレクションを表すSPWebCollectionオブジェクトにアクセスできます」でよいのではないでしょうか。
「アクセスできるようにします」はこのWebページに数回出現していますが、最近はprovideをこう訳すのが流行っているのでしょうか。統一されていればいいというものではないと思うのですが。